相続した不動産、その管理に頭を悩ませている方も多いのではないでしょうか。特に、相続放棄をした後でも管理義務が残るケースは戸惑う方も少なくありません。管理義務について理解せずに放置すると、思わぬトラブルに巻き込まれる可能性もあります。
今回は、相続放棄後と相続した場合での不動産の管理義務について、その範囲や責任、回避方法を分かりやすくご紹介します。
相続放棄後の不動産の管理義務とは何か?その範囲と責任を解説
相続放棄後の管理義務とは何か?
相続放棄は、被相続人の遺産を一切受け継がないという意思表示です。しかし、相続放棄後でも特定の条件下では不動産の管理義務が残ることがあります。相続放棄した時点においてその不動産を「現に占有」していた場合です。
「現に占有」とは、事実上その不動産を支配している状態を指し、居住している、使用している、鍵を保有しているなどが該当します。占有していなければ、管理義務は発生しません。

民法改正による管理義務の変更点
2024年4月1日の民法改正により、相続放棄後の管理義務の内容が変更されました。
改正前は、相続放棄者には広い範囲の管理義務が課せられていましたが、改正後は、「現に占有している場合のみ」管理義務が発生するようになり、管理義務の範囲を明確化し、相続放棄者の負担を軽減するものになりました。
管理義務の内容の具体例と注意すべき点
管理義務の内容は、「自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存する」ことです。具体的には、建物の老朽化防止、鍵や重要書類の管理、不法侵入の防止、近隣住民への配慮などが挙げられます。管理義務を怠り、故意または重大な過失によって財産を滅失・損傷させた場合、損害賠償請求を受ける可能性があります。
相続した不動産の管理義務を回避する方法
管理義務は、相続財産を他の相続人または相続財産清算人に引き渡すことで回避できます。他の相続人がいる場合は協議の上、引き渡しを行いましょう。相続人がいない、もしくは全員が相続放棄している場合は、家庭裁判所に相続財産清算人の選任を申し立て、清算人に引き渡す必要があります。
相続した不動産の管理義務発生時の行政書士によるサポート体制
行政書士が対応できる業務範囲
主に相続関係説明図の作成、遺産分割協議書の作成や相続財産調査、相続財産目録の作成、相続放棄申述書の作成、相続財産清算人の選任申立て(←削除)、相続財産の管理・処分に関する手続きなど、遺産分割の準備段階における業務となります。
また、行政書士ができない業務として、不動産の相続登記(司法書士の業務)や裁判所へ提出する書類の作成(司法書士や弁護士の業務)、相続税の申告(税理士の業務)などがあります。
スムーズな手続きのための準備と必要な書類
相続手続きに必要な書類は、戸籍謄本、住民票、固定資産評価証明書、不動産登記事項証明書などです。行政書士は不動産の相続登記を請け負うことができないため、あくまでも書類集めや助言などでサポートする形になる点に注意が必要です。
行政書士に依頼する相続手続きのメリットとは
相続手続きは相続人が自分で行うこともできますが、行政書士に依頼することでさまざまなメリットがあります。行政書士は相続人の調査から名義変更、遺産分割協議書の作成まで、複雑な手続きをまとめて依頼できるので、手続きのやり直しや漏れを防ぐことができ、余計な手間や時間を省けます。
さらに、行政書士に依頼することで費用が抑えられる点も大きなメリットです。金融機関や弁護士に比べて、行政書士の費用は一般的にリーズナブルで、コストパフォーマンスが高い点も魅力です。
相続不動産の管理義務でお困りの際は本村法務事務所へご相談ください
今回は、相続放棄後と相続した場合での不動産の管理義務について、その範囲や責任、回避方法を解説しました。
相続放棄後でも、現に占有している不動産については管理義務を負う場合があります。民法改正によってその範囲は明確化されましたが、依然として複雑な手続きです。管理義務を回避するには、他の相続人または相続財産清算人に財産を引き渡す必要があります。
本村法務事務所では、お客様の離婚・相続・遺言に関する手続きから不動産売却まで、幅広くサポートが可能です。お困りの際はぜひご相談ください。