甥・姪が知っておくべき叔父・叔母の相続の基礎知識

叔父や叔母に万が一のことがあったとき、「甥や姪でも相続できるのだろうか?」と疑問に思う方は少なくありません。特に独身や子どもがいないケースでは、相続人が誰になるのか、どんな手続きが必要なのかが分かりにくく、戸惑うことも多いでしょう。

本記事では、長崎県で遺産相続や成年後見、許認可申請などを行う本村法務事務所が、甥や姪が相続人になる仕組みや相続手続きの流れ、遺言や相続放棄との関係、トラブルを防ぐポイントまでをわかりやすく解説します。これから相続に向き合う方にとって、知っておくべき基礎知識をまとめましたので、ぜひ参考にしてください。

叔父・叔母の相続の基本ルール

叔父や叔母に万が一のことが起きたとき、誰が相続するのかは法律で明確に決められています。

法定相続人の順位と範囲

相続人には順位があり、まず配偶者が常に相続人となります。その上で以下の優先順位が定められています。

  1. 子ども(直系卑属)
  2. 父母(直系尊属)
  3. 兄弟姉妹

叔父や叔母に配偶者や子どもがいない場合、兄弟姉妹が相続人となります。つまり、甥や姪が直接1位の相続人になることはなく、親である兄弟姉妹が先に相続権を持つのです。

甥・姪が相続できるケース

甥・姪が相続人になるのは、兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合です。これを「代襲相続」と呼びます。たとえば叔父が独身で、兄弟姉妹の一人がすでに他界している場合、その兄弟姉妹の子である甥・姪が代わりに相続権を持ちます。割合は本来の兄弟姉妹が受け取るはずだった分を等分する形になります。

相続の手続きの流れ

相続はただ「受け取る」だけではなく、一定の手続きが必要です。

相続開始から遺産分割までのステップ

一般的な流れは以下の通りです。

  1. 被相続人(亡くなった方)の死亡届を提出
  2. 相続人の確定(戸籍の収集で確認)
  3. 遺産の調査(預貯金、不動産、負債など)
  4. 遺産分割協議
  5. 名義変更や相続税申告

特に重要なのは、相続人を正しく確定することです。甥・姪が代襲相続する場合には、戸籍をさかのぼって取得し、関係性を証明する必要があります。

必要となる書類と準備

相続手続きに必要な主な書類は次の通りです。

  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本と住民票
  • 遺言書(ある場合)
  • 財産を証明する資料(通帳、不動産登記簿、証券口座の明細など)

甥・姪が相続する場合、戸籍の収集範囲が広くなるため、早めに取り寄せを始めることをおすすめします。

遺言書と相続の関係

遺言があるかどうかで、甥・姪の相続権は大きく変わります。

遺言がある場合とない場合の違い

遺言があれば、その内容が優先されます。たとえば叔父が「財産を友人に遺贈する」と書いていた場合、法定相続人である甥・姪よりも遺言が優先されます。遺言がなければ、法律で定められた順位と割合に従って相続が行われます。

遺留分と甥・姪の扱い

注意点として、甥・姪には遺留分(最低限の取り分を保証する制度)が認められていません。そのため遺言で「一切渡さない」と指定されてしまえば、甥・姪は財産を受け取れない可能性があります。ここが子どもや配偶者との大きな違いです。

トラブルを防ぐためのポイント

相続では思わぬトラブルが発生しやすいものです。ここでは甥・姪が相続人になる場合に特に気をつけたいポイントを紹介します。

相続放棄や限定承認の検討

相続にはプラスの財産だけでなく借金も含まれます。もし叔父や叔母に多額の負債があった場合、相続放棄や限定承認を検討する必要があります。相続放棄は家庭裁判所に申し立てることで可能ですが、期限は3か月以内です。甥・姪が相続人になる場合でも、このルールは同じです。

遺産分割協議の注意点

複数の甥・姪が相続人となる場合、話し合いがスムーズに進まないこともあります。全員の同意が必要なため、公平な分け方を意識することが重要です。特に不動産など分けにくい財産は売却して現金化するケースが多いです。

よくある質問(Q&A形式)

最後に、甥・姪からよく寄せられる質問をQ&A形式で整理します。

叔父・叔母と同居していた場合は有利?

同居していたからといって自動的に相続権が強くなるわけではありません。ただし、介護や生活支援を行っていた場合は、寄与分として評価される可能性があります。その場合は他の相続人と協議し、取り分を増やしてもらえる余地があります。

相続税はかかるのか?

甥・姪が相続する場合、相続税の基礎控除額は他の相続人と同じですが、税率が2割加算されるルールがあります。たとえば配偶者や子どもが相続するよりも税負担が重くなる点に注意が必要です。税額が大きくなる場合は、専門家に相談して節税策を検討するとよいでしょう。

まとめ

叔父や叔母に万が一のことが合った場合の相続は、配偶者や子どもがいる場合と比べて相続人の範囲が複雑になりやすく、甥・姪が相続権を持つのは「代襲相続」または、今回は割愛しますが「数次相続」のケースです。いずれの場合も、相続関係が複雑になりやすく、さらに、遺言書の有無や遺留分の扱い、相続税の加算など、一般的な相続とは異なる注意点も多く存在します。

そのため、まずは自分が相続人に該当するのかを戸籍で確認すること、そして相続する財産や負債の全体像を早めに把握することが大切です。必要な場合には、相続放棄や専門家への相談も検討しましょう。

本村法務事務所は不動産会社も併設していますので、相続手続きのサポートや戸籍の収集、不動産調査、遺産分割相談から不動産売却まで、お客様を幅広い知識でトータルサポートさせていただきます。ぜひお気軽にご相談ください。
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※相続税については、税理士の独占業務となります。